新しいホームレス、ネットカフェ難民

 8月28日夕刊。厚生労働省の調査で住居を失い、主にインターネットカフェで寝泊りしている「ネットカフェ難民」が全国で約5400人との記事。半数は日雇いなど短期雇用を中心とした非正規労働者で、約4分の一が20代の若者とのこと。今回の調査では、住居がなくて週の半分以上をネットカフェに泊まる人をネットカフェ難民として厚生労働省は5400人という数字を出した。東京と大阪で実施したネットカフェ難民約360人への聞き取り調査では、東京の平均月収が10万7千円、大阪が8万3千円で、約4割が路上生活を経験。典型的なワーキングプアと呼ばれる人々である。

 ワーキングプアの問題については、1年前にワーキングプア。この問題に政府はどう対応するのか。で述べた。その後、事態はさらに深刻化していると考えざるを得ない。従来の路上生活者に20〜30代はほとんどいなかったのであるが、若年層のホームレスはネットカフェ難民化しているのである。また、厚生労働省は今回、5400人という数字を出したが、本調査には日本複合カフェ協会は協力しておらず、実態はまだ酷い可能性がある。

 なぜ、このような事態になったのか。なぜ、このようなワーキングプアと呼ばれる人々が生み出されたのか。それは「規制緩和」、「民で出来ることは民へ」と大声で唱えた小泉以前から実施された規制緩和の為なのである。江戸時代から「口入屋」と呼ばれる労働者の派遣業は存在したが、労働者が劣悪な環境下で酷使されることが多く、騙されることも多かったことより、職業安定法では労働者保護の観点から人材派遣業は禁止していた。それを1986年に労働者派遣法が施行され、専門性が強く、一時的に人手が必要になるコンピュータ関連等の13業種のみに限り、人材派遣が可能になった。それが1999年の改正により禁止業種以外は全て解禁され、グッドウィルのような大手人材派遣業者が出現することとなった。そして、携帯電話で1日単位、あるいは数時間単位で呼び出されて、使い捨てにされる労働者が出現したのである。

 あのコムスンで問題を起こしたグッドウィルグループのホームページを見ると人材派遣のメリットを『人材育成・人材採用コストの削減』と言っている。会社は一面公的な存在であり、その会社が人材の育成を止めてどうするのか。それを認める政府とは一体何なのか。勉強道具も持たずに学校に行く高校生や化粧道具しか持たないで学校に行くような生徒をまともな社会人に育成しているのは中小企業である。会社は非常に重要な教育機関なのである。その教育力は非常に凄い力を持っている。現在の義務教育と高校教育だけではまともな人間は育たないだろう一見くそみたいな人間を全うに育成しているのが企業なのである。あのグッドウィルは登録スタッフが約278万人おり、その72%が20代だという。逆に言うと電話一本の使い捨てを当てにしないと生きていけない人間がグッドウィルだけで278万人抱えていることになる。

 普通、こういう本は買わないのであるが、病院で暇つぶしにBIG tomorrow10月号を買った。その中に正社員と非正社員の格差DATAが載っている。データは政府関係や新聞社のものなので正確であろう。それを見ると2003年から2006年で正社員は減少し、非正社員が増加し続けている。25〜35歳での比較では、正社員の未婚率は46%で親への依存割合が12%であるのに対し、非正規雇用では未婚率96%、親への依存率52%となっている。要するに非正規雇用の若者は結婚も出来ないし、親が貧乏ならホームレスにでもならざるを得ないのである。そして派遣労働者の日給はさらに下落しているのである。

 年金未納や少子化が問題になっているが、解決策は簡単である。労働者保護のために職業安定法で人材派遣業を禁じればよいのである。

 これまで何度も言っているように、この問題を放置すると数年から数十年後に我々は大きなしっぺ返しを食らうことになる。年金未納者の大量生活保護世帯化、犯罪の多発・凶悪化、少子化である。

 8月24日、名古屋市で会社員の女性が拉致・殺害されたが、犯人達はインターネットの「闇の職業安定所」で知り合った仲間3人であった。被害者の女性も派遣または契約社員で、犯人3人の内2人が無職で一人は車中で生活していたらしい。要するにホームレス状態ではなかったのか。被害の女性も哀れであるが、ある意味で犯人も哀れである。このような犯罪を無くす為に国家統制を厳しくするのは愚の骨頂である。全うに働けば、全うに生活できる当たり前の社会にすればよいのである。欧米に併せて、江戸時代の口入稼業を復活させるような馬鹿なことをやっているからこういうことになる。自民党は厳しく反省する必要がある。

 労働者を疲弊させて何とも思わない安倍。美しい国は、まず労働者が全うに生活できる国でなければならない。若者が親に頼らず生活でき、まともに結婚できる国でなければならない。

 年金未納者の大量生活保護世帯化、犯罪の多発・凶悪化、少子化の問題を先回しにするのか、直ちに解決するのか。解決策は明確である。

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